「屋根屋」という小説がありますが、、、
築十八年の木造二階建ての家が雨漏りし始めて、私は夫に屋根を点検するように頼んだ。
↑これは「屋根屋」という芥川賞作家・村田喜代子氏の2014年発売の小説の冒頭の一文
です。
知らないよ、読んでないよという人のために、ネタばれしない程度に内容をかいつまんで紹介。
主人公は福岡在住で夫と高校生の息子がいる平凡な中年主婦「みのり」と、その中年主婦の暮らす家の屋根修理にきた九州訛りの朴訥な屋根専門の個人営業・永瀬工務店の「永瀬さん」です。
この永瀬屋根屋さんは、過去に奥さんの病死で心身を患い心療治療の結果、自在に夢を見る事が出来るようになり、しかも他人を自分の夢に誘導できる特殊能力の持ち主なんです。
そして彼らは屋根を見に行くのです。その姿を、形を、佇まいを、構造をどこまでも見に行くのです。
その丈夫さを、複雑さを、静かさを、雄大さを、逞しさを、その差異をどこまでも見に行くのです。
その対象は奈良の法隆寺五重塔であったり、パリのノートルダム寺院だったり、、、、、
物語の展開はすべて「みのり」さんの目線で進行していきます。
全体はSFファンタジーでラストは少し
ホラーっぽくまとめるところなんぞは、今流行りのミステリー小説調という感じでした。
著者の村田氏はこの作品執筆にあたり、屋根に関して相当勉強をされた事が窺えました。
↑挿絵も夢の中で浮遊する様を示唆しているようでした。
(シャガールの「街の上で」という作品だそうです。)
弊社
「街の屋根やさん」とは関係ないけれど、タイトルと主人公の一人が「屋根屋」という事で読んでみるのも一興かと思います。
余談ですが、
村田喜代子氏著の第97回芥川賞受賞作品「鍋の中」は後の
黒澤明監督作品「八月の狂詩曲(ラプソディー)」の原作です。
今回のコラムは投稿者Mのミニ読書感想文でした。
(小学生の夏休みの自由課題みたい!)
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